2015年8月16日日曜日

くがにまーしゅ


『塩』。ようやく、「これは紹介したい。ぜひともみんなに知ってもらいたい」という塩が見つかったのでご報告します。

宮古島と石垣島の間にある多良間島という場所で作っている『くがにまーしゅ』という塩である。



そもそもこの塩との出会いはお客様繋がりであった。マッサージの方のお客様で農業をされている方がいらっしゃって、この灼熱の時期には朝からスプーン一杯の塩を口にしてから作業に入るのだと言う。で、「これまでに出会ったことの無い、凄い塩が見つかりました。どうも疲れ具合も違うような気がするんですよ」などとおっしゃる。この方が目指されている農法は、ちょっと普通ではないレベルのものだし、かねがね食などのお話をしていて感心する場面も多かったので、この塩について調べてみた。



まずこの塩が凄いのが製法が天日のみ、ということ。窯炊きは結構多いのだけど、お日様の光だけとなるとなかなかそうはない。やはり時間はかかるだろうし、量だって取れないだろうし、天候にもろに左右されるだろうし、採算だって取れないだろう。ということで、ひとまず作っている方に連絡を取ってみる。と、かなり快活でエネルギッシュなおじさんで、長岡さんという、知る人ぞ知る塩職人であった。

面白いのが長岡さんは元戦場カメラマンであったということ。だが学生の頃から塩作りに興味があったのだという。そしてまたさらに面白いのが、この長岡さんこそが熊本は天草の有名な塩である『ソルトファーム』の生みの親であったことだ。『ソルトファーム』は僕が以前勤めていた雑誌『九州の食卓』でも取り扱いをしており、僕も結構知っていたのである。



『ソルトファーム』を次の方に譲った長岡さんは、またさらに自分なりにこだわった塩を作りたかったようで、その場所を探していたらしい。やはり天日のみというのは海水の質も問われるらしく、それ相応の場所でないとダメらしいのである。電話で僕が「うーん、でも窯炊きと天日はそんなに違うんですか?」とアホみたいな質問をすると、「そりゃ違います。やはり窯炊きだとどうしてもミネラルなんかが飛んでしまうんですよ。でもそのことを「ソルトファーム」のニンゲンに言うと怒りますから言っちゃダメですよ(笑)」となかなかお茶目な長岡さん。約3ヶ月から4ヶ月かけて作る天日と風だけで作る塩。作るところを見てみたいなぁ。というか、なんだろう。長岡さんというひとは初めてお話しただけなのに、どうも惹き付けられるようなちょっとカリスマ性を持ったタイプの方である。「じゃあまずは試食用を送りましょうか」という長岡さんを僕は遮って、「いや、もう注文させていただきます」と決めてしまった。『ソルトファーム』の生みの親という流れもしっくりしたし、これはまず間違いが無いという圧倒的な確信があったし、そもそもお日様の光だけで作る塩なんてもうそれだけで素晴らしい。

かくして『くがにまーしゅ』が届いた。そして舐めてみると・・・おおおっ、なんとなんと。まったくいがみがなく、舌に溶け込んでいく感じである。きっと無理なく自然に海水を干しているからだろう。体内の血や体液に近い感じが舐めてみて分かるのだ。それを証拠に次次に塩に手が伸びて舐めてしまう。ちなみに一歳半になる息子の詩も大好きでぺろぺろ舐める。100g1000円。価格はするけども、天候次第で出来るかどうかもわからないし、手間隙を考えるとこれは正直高いのか安いのかわからない。お肉とか刺身も美味しそうだし、豆腐なんかもよさそうだ。

・・・実はさらに面白いことがある。長岡さんが言うには販売にはまだ至っていないが、通常の塩を6ヶ月寝かせたタイプのワンランク上の塩があるというのだ。それも一緒に送るから試してほしいのだと。で、届いたんだけど・・・これが凄いんですよ。通常の『くがにまーしゅ』でもほんとうに美味しいのに、もっと甘くてまろやか。結晶も大きくて、これはもう芸術品である、と言い切りたい。もし試したいのならばこっそり言ってくださいね。まだもう少しありますんで。



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