2017年10月5日木曜日

展示会『子供の領分-childen's conner-』によせて。その1




今回の展示会である『子供の領分-childen's conner-』を思いついたのは、ついこないだの8月の夏だった。そもそも8月に思いついた展示会を10月に行おうとする・・・なんてのが店としておかしいことこのうえないのだが・・・まぁそれは追々書いていくとして、とにかく今年の夏のことだった。

相も変わらず、今年の夏もなんだかんだでバタバタと忙しく、僕も奥さんもそれぞれの仕事にかまけて「家族としての夏の時間」なんて取る余裕もまったくなかった。いつもそれで奥さんの母に叱られるのだけど、それぞれにお店をやっているとなかなかそうもいかないのが現実だ。ただあるとき、8月に僕の仕事の関係で岡山に行く予定が浮かび上がった。そこで今年の夏はどこへも行けないだろうし、であれば、この仕事を夏の家族旅行にしてしまおうか、と考えたわけだった。

・・・ただ。三歳と一歳になったばかりの男の子ふたりを連れた旅行なんて、それはどう考えても、もはや「旅」である。いや、苦行、である。とにかく考えただけでゾッとする。子供ひとりならまだしも、ふたりとなるともうお手上げだ。だいたいふたりとも保育園に行きだしてからは、ひと月に一回はどちらかがなんらかの病気をもらってきては家族に移り、たいてい誰かが必ずや病気をしているという状態。これから旅行の予定を組んでも、当日にみんなが健康である保証も無いだろうしな。

まぁそれは仕方がないとしても、もっと大きな命題のようなものが、自分のなかにうっすらあるのにその時に初めて気づく。そもそもがこれくらいの年齢の子供を旅行に連れて行く勇気のようなものが、覚悟のようなものが、現在の親としての自分にほぼ無いことに気づくのだ。それは自分の体力的なことだったり、特に年齢的にもしょうがない反抗的な態度がたまに出てしまう上の子のことがことさら心配になったりする面もあるのだけれど、でもそれよりもっと大きい漠然とした「なにか」が自分のなかにあって、それと無関係ではないようだ。うまくいえないけれど、現在のこの国でこれくらいの歳の子供を育てていて漠然と感じる「なにか」。たぶんそれは僕だけではなく、同じような環境の親であればきっと感じているだろう「なにか」。自分はそれを感じたからこそ、今回の夏の旅行に踏み切ったのだと今にして想う。

とにかくなにより恐ろしいのが、自分の仕事の関係上、行く所行く所、すべてワレモノがある場所であるという点である。そもそも今回の目的だって、とあるガラス作家の展示会に行くことであった。果たして本当に大丈夫なのだろうか。・・・それにしても、新幹線と現地でのレンタカーを組み合わせて、真夏の岡山で僕ら家族は文字通りぼろぼろになりながらもよく頑張ったと思う。これは実際に経験したことのあるひとでないとわかるはずもないのだけど、知らない土地に行って、小さな子供ふたりを文字通り抱え、ベビーカーであっちらこっちら歩くのはそれはそれは大変だ。いやいや、大変なんてものじゃない。そもそも知らない土地の駅に着いて、エレベーターを探すのだって一苦労どころの話じゃないのだから。別に誰のせいにもするわけではないけれど、そんなとき、少なくともこの国は子育てという面においては、そんなにひとびとに対して優しくはないのだろうな、とぼんやり想ったりする。そういう面から考えられた視線が、街や駅に立っていても微塵も感じられないからだ。それはきっとつまり、例えばお年寄りだとか、からだの不自由な方に対してだって、まったく同じであるはずだ。弱者(という言葉は好きではないが)、弱いもの、の立場から、本当になにかを考えた跡がどこにも見当たらない。どこに行っても見つからない。それはその立場になってみて、初めて分かることなのだけど。僕だって若い頃にはてんで気づかなかったから。そしてこういうことを言ったり書いたりすると、そもそもそれはそんなところに行く方が悪いのだとか、当事者の準備が足りないだとか、逆に当事者へキツい意見が跳ね返って来るのがなんといっても現在の時代の空気であると思う。そしてそんなすべてのことが、あくまで僕にとっては、今回の展示会を行うきっかけに繋がったような気がする(つづく)。

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子供の領分-Children's Corner-
presented by scarlet company.
2017.10.7(sat)~10.16(mon)
「子供のときだからこそ、しっかりとしたうつわを使わせなければダメよ」・・・とある賢者は僕にしっかりとそう言った。プラスチックなんかでは決して得ることのできない、割れて壊れてしまう儚い刹那と、未だ柔らかで豊かなその感性へ丸ごと訴えるような煌びやかな芸術性と。だからといって決して子供に媚びることのない、大人も子供も共に使える伸びやかな普遍性と。そんな器が欲しい。そんな器こそ、このまるで体温を感じさせないような現在の世の中に提案したい。わがままで仕方ないそんなお願いを「Scarlet Company(スカーレットカンパニー)」のふたりに投げてみた。その答えが、この展示会といえそうです。
★「Scarlet Company(スカーレットカンパニー)」
PRODUCED BY KANAZAWA HIROKI&SHIGE YUKO
/SINCE 2017/FROM KAMIAMAKUSA TO EVERYWHERE...
※期間中は『自然派きくち村』による食材の販売、その食材を使った『KOKOPELLI(ココペリ)』オリジナルのお菓子なども販売します。
※photo:hisatomo.eto/subject:uta.nakamura

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