岡山県の後楽園の近く、出石町(いずしちょう)という場所に『アートスペース油亀』というギャラリーがあります。築130年の旧油屋を改装し、毎月それはそれは魅力的な展覧会を行っている所なのですが、以前、取材でそこに伺ったときにある器と出会いました。
全国から1000点ほど集められた、クラクラするくらい素晴らしい器たちのなかから(ちなみにそれはコーヒカップだけを集めた「コーヒーのための器展」でした)、限られた時間のなかで「これっ」と選び出すのはほんとに難しい作業。迷いだしたらそれこそきりがない。自分のセンスの思うがまま、どこの作家のものかも考えず、己の目ん玉と感性に飛びこんできたのが・・・福岡の『羅以音窯(らいおんがま)』のものでした。
九州は福岡の窯元と知り、ぜひ一度伺おうと思いながらたらたらと月日がたち、ようやく先日行くことができました。福岡インターで降りて、おっと、と思うくらいの山道を行き、ようやくたどり着いたのはネットもテレビも来てない、山の奥。そんな場所に『羅以音窯(らいおんがま)』はあります。
ご夫婦で作られている数々の作品は、いってみればエキゾチックな雰囲気を感じさせながらもどこか人懐っこい。“リズム”や“音”を感じさせるかのような不思議なその模様を見ていると、ふと人の根源的なルーツまで思ってしまうような、ちょっと魅惑的な器です。ご夫婦それぞれ違う技法で作られているそうですが、両方の作品が並んでいてもまったく不自然を感じさせない。まるで違う二つの曲からある共通の和音が聴こえてくるような、そんな感じなんです。
窯元に伺い、ご主人の江口誠基さんにお会いし、かれこれ3、4時間笑い合いながら感じたこと。それは「名は体を表す」、もとい、「作品は体を表す」。
屈託がない笑顔で冗談を交えながら自分や作品を語るその一方、どうにか作品に対する考えや想いをつい語ろうとすれば、今度はうまく言葉が見つからず。照れながらはにかむその様は、陶芸家というよりも、むしろミュージシャンを思わせるもの。ご自身もかなりの音楽好きということで、なるほど、このリズムや音を感じさせる作品はむべなるかな・・・という感じを勝手に受けたというわけです。
それにしてもなんにせよ、やっぱり作り手にお会いするのは楽しいことです。もうそれだけで、自分が持っているその器のストーリーができてしまう。買った器の作り手に会って話せば、もうそれはすでにただの「モノ」ではなく、「あの人が作ったモノ」になるわけで。
ということで、近々『羅以音窯(らいおんがま)』の器をお店で見ることができるようになると思います。パチパチパチー。
羅以音窯〈らいおんがま〉
福岡県飯塚市舎利蔵1666
2013年6月22日土曜日
2013年6月17日月曜日
山都町『本田農園』のゆずみつ
熊本県の上益城郡山都町。ここは一般的に通潤橋なんかで有名な場所ですが、ここに「柚木(ゆのき)」という土地があります。その土地の名からも分かるように、自生した柚で昔から知られる場所らしく、いわば“柚の里”なのだとか。
ここで30年以上前から無農薬で柚を栽培されている『本田農園』があります。自家栽培した柚を使った柚子胡椒をメインに、他にもゆずみつ、柚ポン酢・・・など様々な加工品を販売している所です。
言わずもがな、柚子胡椒は柚の皮から作るスパイス。柚の皮を擂り下ろし、唐辛子と塩を混ぜて作るもの。・・・で、あれば、柚の皮が安全な方がいいのはきっと子どもにでも分かること。なのですが、なかなかここの柚木でも手間と暇をかけて無農薬で柚を栽培し、それを使った柚子胡椒を作る所はほとんどないそうです。
でもあらかじめ言っておくと、これはあくまで個人的な意見ですが(そして年齢とともに考え方も変化するでしょうけど)、正直にいってあまり細かすぎるほど潔癖に「オーガニック」や「無農薬」にこだわるのは好きな方ではありません。醤油や味噌、塩くらいなら、やっぱりしっかりしたものを使いたいけど、もう細かくあれこれ言い出したら今日の夕飯の支度が進まなくなってしまいます。・・・そしてしょうがなく、ドラモリに走ったりする自分がいたり。
ただ人間はなにより正直なもので、自分が本当に「美味しい」と思い、胸を打たれたものは不思議と忘れないし、すぐに人に勧めたくなるもの。本田農園の柚子胡椒、そしてなにより先日伺った時に飲ませていただいた「ゆずみつ」は・・・それはもう胸がときめく味でした。
これが無農薬の柚を使用しているからなのか、それとも本田農園の方々のめくるめく想いがこもっているからなのか、ただの自分の好みなのか、たぶんどれもその理由なのでしょうが、それより、ただ一人のまっさらな消費者として、ただただその煌めく美味しさに驚いたのでした。
これが無農薬の柚を使用しているからなのか、それとも本田農園の方々のめくるめく想いがこもっているからなのか、ただの自分の好みなのか、たぶんどれもその理由なのでしょうが、それより、ただ一人のまっさらな消費者として、ただただその煌めく美味しさに驚いたのでした。
・・・ということで、余計なステートメントをいれながらで長くなりましたが(笑)、今後、山都町の『本田農園』の商品の販売を検討させていただいています、という記事でございます。
本田農園
熊本県上益城郡山都町柚木806
本田農園
熊本県上益城郡山都町柚木806
2013年6月12日水曜日
『Biggi(ビッギー)』のドイツパン
ドイツで修行して国家資格をとったおばちゃんが作る本格的なドイツパン。
そこらで食べるパンのように「ふうわふうわ」してなくて、持てばどっしりとして重く、噛めば麦と塩の味がはっきりとその存在を主張して止まない。ちょっと料理をする人ならば、このパンに触れるだけで「・・・はてさて。これは、久しぶりに凝ったソースだかシチューだかをこしらえるかな」なんて嬉しくなってしまうような、そんな存在感のあるパンなのです。
そこらのパン屋のように、買ったパンを一個一個ビニールに入れるなんてことは決してしない。そんな過保護なことをしているのはこの国くらいのものだし、環境だかなんだか、そもそもどう考えても不必要でしょう。・・・そういう姿勢を貫くこの店のおばちゃんの主義が、しっかりとパンの味にも染み付いている。ま、ともかくとてもとても愛すべき、パン屋さんなのです。
Biggi
熊本市中央区帯山3丁目18−45
2013年6月11日火曜日
天草の「陶丘工房」
昨日は天草にある窯元、「陶丘工房」へ。
そもそも熊本の天草は陶器の原料である陶石の産地として有名で、
だからこそ窯元がたくさんある・・・。
なんていう話はよく聞いたりするのだけれど、じゃあ熊本で天草の陶器をたくさん集めたお店があるかというと全然そうではなく、地元の人だって実は天草に窯元がたくさんあることを知らなかったりする。まぁそういうことはよくある話なんだろうけど。
熊本で生まれた自分だって実は同じで、「そういや、天草って窯元がたくさんあると聞くなぁ」とふと思ったのは、10年いた東京から帰ってきてから。そうして幾つかの窯元をまわって出会ったのがこの「陶丘工房」でした。
デザインはとてもシンプルで、和洋いずれにも合わせやすく、全体的にどこかしら女性的な雰囲気を感じさせる。「飾ってめでる」というよりも、あくまで日々の生活の中で使われ、日常に溶け込んでいくことをまるで器自体が望んでいるかのような、手に取りやすい器たち。
現在『MU』でもこの工房のものを使わせていただいていますが、今後は器そのものの取り扱いをさせていただく予定です。・・・楽しみだなぁ。
陶丘工房
熊本県天草市五和町御領7005-1
http://www.tot3.com/tokyu/
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