2016年1月27日水曜日

俺のすべて



前回アップした『xocol(ショコル)』のチョコレート、なかなか好評で嬉しい。

というわけで、2016年も始まって1ヶ月近く経とうとしているわけだが、今年はもうちょっとこういう文章をこまめに書いて行こうと思っている。「こういう文章」というのが、果たしてどういう文章なのか説明が難しいのだけども、まぁ店をやっていくうえでの蛇足、いや個人的な戯れ言のようなものというか。

最近個人的にとても気になるのが『BIG LOVE』という東京のクソかっこいいレコード屋さん。もう姿勢からなにからナニまでかっこ良い。いつもチェックしている音楽サイト『the sign magazine』のインタビューで知ったのだけど、店をやっていくうえで勝手にとても勇気づけられた。店をやっているひとたちは、実はみんな日々月々年々いろいろあるはずで、ほんとはいろんなところでそれなりにこういう風に勇気づけられていたりするのだろうけど、でもそんな話はついぞ聞いたり読んだりした試しがあまりない。なんでだろう? それを明かすのがかっこ悪いからか、単に忙しすぎるからか。

いつだかもそういうことを書いたと思うのだけど、やっぱり自分のような店、つまりはかなり個人的なラインを押し通して店をやっているような人間は、どうしてもアンダーグラウンドな方向になりがちだ。それはやっている本人が好むと好まざるに関わらず、自分のやり方にどうしてもこだわりつつ、想うところを想うようにやっていけば、自ずとそのひとの影のようなものが出てしまう。その影こそ、アンダーグラウンド。だがその影こそ、俺のすべて。俺だってこれまで、たくさんのそんな影ある店たちを愛してきた。ああ、今すぐにでも飛んで行きたい西荻窪『ぷあん』(土、日のカオソイ目当てでもいい)、笹塚にあった今は亡き『M'S CURRY』(これまでもこれからも生涯でいちばん美味しかったであろうカレー)、最初惚れすぎて入れなかった岡山の『cafe moyau』(次店でもある『fuzkue(フヅクエ)』にはまだ行けていない)、熊本だったらこないだまであった蕎麦屋の『森山』だって店の親父の影が大有りだった(バイトをわざと怒鳴りつける親父が苦手なひとは多かった)。今だったらシャワー通りのスペインバル『エルカスティーヨ』なんか大いに影があって実に愛している(こないだ行ったばっかじゃん)。うーん、なぜか飲食店しか思い浮かばないな・・・。

まぁどの店もやっている人間の色濃い影がどうにも落ちている店で、たぶんソリが合わない人は一度行ってから行かなくなるようなタイプの店なのかもしれない。そしてきっと、うちの店もどちらかというとそういう店なのだろうなぁとやっている自分でも感じている。そもそも自分の好きなものしか取り扱わないと言い張ったって、「でもそれはお前の趣味でしょ?」と問われたらば「うん、そうかもね!」としか返答出来ないし(たぶん即答する)、まぁともあれ自分がかっこ良いと想えばそれがすべて善しであるし、あなたがそれをかっこ良いかと想うかどうかは僕にはてんでわからないし、だがしかしそれをすべてのひとがノンといえば当たり前に僕の首が自然に絞まっていくという、考えてみると世の当たり前の仕組みである。でもメイクマネはメイクマネ。ライオンだって草食動物の周りを生涯離れられない(自分はライオンなんかじゃなくって野良猫くらいだが)。だがしかし、ほんとはその仕組みこそが普通のはずだよね。中途半端くらいに気に入ってるものなんて、わざわざ自分でプレゼンしたくなんかないよ。それは少なくとも自分のやることじゃない。

ただね、やっぱりそうは言ってもこれは砂漠に水を卷くような、厳しい戦いなのです。どんな店であれ、そういう部分はあるだろうけど、たまに(いや常に)途方に暮れてしまう時がある。どこまでいってもひとりぼっちなのだなぁ、と素直に納得してしまう。時代的にいっても、相手はマスじゃなくって、個人。インディヴィジュアル。どうにかしてひとりひとりをこちらのセカイに引っ張り込んで行く、果てのない作業。だからといって、場所を呪ってはいけない。そこの持ち場でやっていけないような君や僕だったらば、きっとどこに行ってもおんなじだろうから。逃げても逃げても逃げても逃げても、自分の影だけはどこまでもついてくるだろうから。ということで、冒頭にあげたインタビューのこんな文章が俺には俄然引っかかってきた、のだな(といいながら、勝手に引用する。すみません)。

『・・・前までは、エリアスに『〈サマソニ〉出るんだよね?』って言って怒られたのと一緒で、好きなことをやって有名になればそれが一番いい、と思ってたんです。けど、今はアンダーグラウンドのままでも世の中にアピールは出来る。〈ダイス〉とか〈セイクレッド・ボーンズ〉っていうレーベルがあるんですけど、やっぱり自分のスタイルは一切変えなかったり。『よし、メジャー行くぞ』みたいなのが昔はあったと思うんですけど、それがない。多少はあると思うんですけど。』

『・・・でも、(日本は)誰もサポートしないじゃないですか? そう思いますね、本当に。金にならなきゃ、っていうのが基本的にあるんで。若い子もわかってないじゃないですか? 親に言わせると、『それは金になるのか? まずは食えるようになってからやれ』とか言われると思うんですけど、『それじゃ駄目だよ、逆なんだよ』って外人に話すとよく言われるんです。彼らはその価値観が本当にわからない、みたいなことを言う。だから、『あ、俺、間違えてないな』って。食えなくてもやった方がいいんだな、と思いますけど(笑)」 』


まぁアングラかどうかなんて、誰が決めんだ、いや俺が決めんだ、おいだったらどうでもいいじゃん、なのかもしれないけど、問題は姿勢だと思うんだ。姿勢。しせい。市井。・・・ん? いや、そりゃ誰だって守らなければいけないものはある。こんな俺にだって、例外無くそれはある。もうトシだし、そんなこと言ってられない。でもギリギリのところまではやっぱり戦いたい。10人からなんとなく愛される店よか、2~3人にどうしようもなく性懲りも無く愛される店がいい。そして願わくば、自分や店がどこかに行ってしまったとき、その影が遺ればいい。そしてその影が次の影へと引き継がれればいい。自分が店を始めたあの時、そして途方に暮れたまさしくこの時、いろんな店の影にこうやって自分が励まされたように。自分が考える店というのは、まさにそういうものなんだけど。











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