2015年8月25日火曜日

取材





お店をオープンしてもうすぐで二年。初めて正式に雑誌の取材を受けてみた。熊本の雑誌で「タンクマ」という、熊本に住む人なら知らないひとはいないだろうというくらいのメジャー誌。

そもそも自分が以前雑誌作りに関わっていたせいもあって、取材を受けるのにどこかしら違和感みたいなものもあり、これまでほとんど取材はお断りしてきた。それに地方で店をやっていくうえで、まず地方の媒体やテレビに出て知られていく・・・という紋切り型のやり方がどうも腑に落ちないというか、元々なにがしかの媒体をやっていたニンゲンがお店をやるんだったらば、そういうあり方に一石投じたいよなぁ、という妙に堅い想いもあるにはあった。考えてみれば自分で文章も書くんだから、だったら自分で発信すればいいじゃないか、ということで、マッサージの方は自分たちで広告も手がけてみたりもしている。

でも今回取材のお話をいただいた編集の方が、取材はNGと聞いていながらも熱意と誠意で電話をかけてこられたし、移転もして「まぁなんかそろそろいいのかもな」というぼんやりとしたひらめきというか想いがふっと降りて来たし、まぁそんなこんなで取材を受けることになった。果たしてうちのような、やろうとしていることがある意味とても分かり難いというか、だいぶひねくれた考えの店が読んだ方に伝わるのかどうか甚だ不安でもあるけれど、そして経験してみてほんとに取材というのは受けるより自分でする方がラクなんだなぁと身を染みて感じたけども(自分にとっては話して伝えるより書いて伝える方がたぶんラクだから)、とても良い経験になった。取材の時のカメラマンの女性が、以前の職場で何回も仕事をした方で、今度はこちらが撮られる側になっていたのが個人的に不思議でとてもおもしろかった。・・・で、さらに上がってきたゲラを見てみると、スタッフさえもが未だ見たことの無い“奇跡のスマイル”が露になっていたので、僕もスタッフも大変驚いて大笑いした(あっこちゃん、ありがとう)。

ところで写真は僕からの要望で1歳半になる息子の詩(うた)と一緒に撮ってもらった。これは単なる親バカ・・・なのでは一応なくて、自分としてはきちんとした考えのある要望のつもりだった。というのはいまのところ、息子は保育園などに預けず、週に半分ちょっとの割合で店に居て、僕や奥さんやスタッフがみんなで世話をしている。店には器なんかもバンバンあって、危ないのは危ないんだけど、まぁ産まれた頃から雑貨店にいるせいか、いまのところそんなにお店の邪魔をすることはない。ということで、お客様が店に来られれば、必然と息子に会う場面が増えるはずであるから、雑誌に掲載するんでも「小さな子がいるかもしれませんよ」と言う意味で出すのもありかと思ったのがひとつ。しかもうちの店は外観や置いてある数々の商品の雰囲気からすると、あまり子ども臭がしないというか、アットホームな感じでもないと思うのだけど、逆にそこのミスマッチ感が自分ではとてもおもろいんじゃないかなと思ったせいもある。というかね、写真通りにお店では大抵僕がいつも子どもを抱っこしているので、あながちあの記事は嘘を伝えているわけではないのです。ちなみに僕は自分でおしめも替えるし、ご飯を作って食べさせるし、本を読んで本気で遊んであげて抱っこして寝かしつけるし、まぁそんなこんなで店での僕の仕事というか活動は、ある意味すべて子どもの世話とも繋がっているので、そこのところをなんとなく表せたら・・・という考えもあるにはあった。

まぁ実際に読んだ方がどう感じるかはわからないけども、とにかく取材に関わられた方々、本当にお世話になりました。明後日、27日発売みたいです。

2015年8月16日日曜日

くがにまーしゅ


『塩』。ようやく、「これは紹介したい。ぜひともみんなに知ってもらいたい」という塩が見つかったのでご報告します。

宮古島と石垣島の間にある多良間島という場所で作っている『くがにまーしゅ』という塩である。



そもそもこの塩との出会いはお客様繋がりであった。マッサージの方のお客様で農業をされている方がいらっしゃって、この灼熱の時期には朝からスプーン一杯の塩を口にしてから作業に入るのだと言う。で、「これまでに出会ったことの無い、凄い塩が見つかりました。どうも疲れ具合も違うような気がするんですよ」などとおっしゃる。この方が目指されている農法は、ちょっと普通ではないレベルのものだし、かねがね食などのお話をしていて感心する場面も多かったので、この塩について調べてみた。



まずこの塩が凄いのが製法が天日のみ、ということ。窯炊きは結構多いのだけど、お日様の光だけとなるとなかなかそうはない。やはり時間はかかるだろうし、量だって取れないだろうし、天候にもろに左右されるだろうし、採算だって取れないだろう。ということで、ひとまず作っている方に連絡を取ってみる。と、かなり快活でエネルギッシュなおじさんで、長岡さんという、知る人ぞ知る塩職人であった。

面白いのが長岡さんは元戦場カメラマンであったということ。だが学生の頃から塩作りに興味があったのだという。そしてまたさらに面白いのが、この長岡さんこそが熊本は天草の有名な塩である『ソルトファーム』の生みの親であったことだ。『ソルトファーム』は僕が以前勤めていた雑誌『九州の食卓』でも取り扱いをしており、僕も結構知っていたのである。



『ソルトファーム』を次の方に譲った長岡さんは、またさらに自分なりにこだわった塩を作りたかったようで、その場所を探していたらしい。やはり天日のみというのは海水の質も問われるらしく、それ相応の場所でないとダメらしいのである。電話で僕が「うーん、でも窯炊きと天日はそんなに違うんですか?」とアホみたいな質問をすると、「そりゃ違います。やはり窯炊きだとどうしてもミネラルなんかが飛んでしまうんですよ。でもそのことを「ソルトファーム」のニンゲンに言うと怒りますから言っちゃダメですよ(笑)」となかなかお茶目な長岡さん。約3ヶ月から4ヶ月かけて作る天日と風だけで作る塩。作るところを見てみたいなぁ。というか、なんだろう。長岡さんというひとは初めてお話しただけなのに、どうも惹き付けられるようなちょっとカリスマ性を持ったタイプの方である。「じゃあまずは試食用を送りましょうか」という長岡さんを僕は遮って、「いや、もう注文させていただきます」と決めてしまった。『ソルトファーム』の生みの親という流れもしっくりしたし、これはまず間違いが無いという圧倒的な確信があったし、そもそもお日様の光だけで作る塩なんてもうそれだけで素晴らしい。

かくして『くがにまーしゅ』が届いた。そして舐めてみると・・・おおおっ、なんとなんと。まったくいがみがなく、舌に溶け込んでいく感じである。きっと無理なく自然に海水を干しているからだろう。体内の血や体液に近い感じが舐めてみて分かるのだ。それを証拠に次次に塩に手が伸びて舐めてしまう。ちなみに一歳半になる息子の詩も大好きでぺろぺろ舐める。100g1000円。価格はするけども、天候次第で出来るかどうかもわからないし、手間隙を考えるとこれは正直高いのか安いのかわからない。お肉とか刺身も美味しそうだし、豆腐なんかもよさそうだ。

・・・実はさらに面白いことがある。長岡さんが言うには販売にはまだ至っていないが、通常の塩を6ヶ月寝かせたタイプのワンランク上の塩があるというのだ。それも一緒に送るから試してほしいのだと。で、届いたんだけど・・・これが凄いんですよ。通常の『くがにまーしゅ』でもほんとうに美味しいのに、もっと甘くてまろやか。結晶も大きくて、これはもう芸術品である、と言い切りたい。もし試したいのならばこっそり言ってくださいね。まだもう少しありますんで。



2015年8月15日土曜日

印度諸々

いよいよ展示会である『印度諸々』もあと少し。

今回のDMもイラスト、デザインともにいつもの上妻勇太画伯(期間は8/17まで延長しています)。




今回の展示会はいつものようなくどいコテコテな感じではなく、できるだけさらりとやりたいので、まずはその旨を伝え、「イラストの雰囲気はこんな感じかなぁ」と、取引先の倉庫にあった一枚の絵を渡す。値段はついていなかったのだけど、気になってどうしようもなかった絵で、担当の方にお願いして持ってきた。





今回のメイカーは社長がインドの方で、片言の日本語を話し、打ち合わせ中にもしっかりと魔法瓶にチャイを入れてこられて僕にご馳走されて・・・なんていう仕事にあまり関係の無いエピソードをつらつらつららと話していると、なんとなく上妻くんのなかでDMのイメージが固まったみたいである。「・・・ふむふむ。例えばその社長さんがたくさん商品を載せた船に乗って海からやってくる感じにしたらどうでしょうねぇ」とかなんとか。つくづく創作とはおもしろいものである。素材さえあれば良いというわけでもなく、どうでもいいかのようなエピソードがいわば"にがり”のようなものになって、最終的に豆腐という作品ができあがるのだ。とかなんとか。








かくして商品は届き、展示会は続く。すべて横浜の店に直接行き、倉庫を案内してもらい、膨大なる商品から「うおおおお」となかば逆上しつつ、最後は気分悪くなりながらひとつひとつ選んできた。























例えば器なんかにしてもひとつの創り手の作品のなかにもさまざまなテイストのものがある。そこから何を選び、逆に何を選ばないか、が僕の仕事と言うか、うちの店のすべてになってくるんだと想う。当たり前の話だけど、他のひとやお店が同じ創り手の作品から選んだらまた別のラインナップ、店作りになるはずである。たぶん、そこの違いこそがおもしろい。違わないとおもしろくない。「あんた、なんでそこ選ぶのよ」という話である。





それにしても。こういう仕事をしていると「きっと自分はセンスがあると想っているひとなんでしょ」と思われている節があるのだけども(実際に戒めみたいにそう言われたこともあるけども)、やっぱりちょっとそれは違っていて、結局のところ、それは自分の感じ方やこころの揺れ具合にできるだけ正直であるしかないよね、というようなことだと思う。うちのような店は、そこだけはできるだけ剥き出しにして剥き出しにして、自分でも驚くくらいに敏感でいたいし、いなければならないと思うのです。もちろんこれは遊びではなくてちゃんとした商売なので、「きっと、売れる」という確信めいたものや商品も必要だけれど、それよりもっと大事で根底に持っていなければならないのが「きっと、伝わる」という強き確信なのだと思うわけで。そして何よりおもしろいのが、そのセンスの剥き出し感のようなものは、狭いかもしれないけどしっかり共有できる、ということ。分かる人には分かるであろう、その「剥き出し感」。例えば福岡のこの洋服屋さん(Figueroua)。自分はブログで見る度に「・・・そのチョイス、剥き出してるよなぁ」と勝手に唸っている。まぁお店を続けていくうえでどこまでその剥き出し感を大切にできるかが勝負でありましょう。・・・なんてちょっとひとごとですが。





ええと。それはそうと、その社長さんに「カディコットンの服はメンズはないのですか?」と伺うとレディスだけとのお答え(写真のも僕が着てますがレディスです)。僕があまりに残念そうな表情をしていたのだろう。社長さんは「・・・でも本当に欲しいならメンズ、作ってみてもいいよ。サイズとか教えてよ」とのお言葉。本当に実現したら嬉しいなー。実際周りにもこういう感じのメンズを欲しているひとを数人知っているし。もし欲しい人がいたら声をあげてくださいね。剥き出してくださいね。ということで、もうちょっと『印度諸々』は続きます。








2015年8月12日水曜日

インスタ

実はこっそり・・・というわけでもないのだけど、お店のインスタグラムを始めている。(@vertigo.shin)



フェイスブックの方はオープンからほとんど毎日更新しているのだけど、インスタはまたそれとは別な感じでいまのところなんとなくアップしている。

といってもネタはだいたい商品、というよりも「きょうのまかない(ほとんど麺)」の紹介のようになっており、ひとが日々喰っているものを見せられる方は迷惑も迷惑だろうが、やりだすとなんとなく続けてしまう方でもあるから、申し訳ないけどなんとなくアップしてしまう。





そもそも考えてみると自分は、この「小さなことでもなんでもいいから日々続けてみて、それが積み重ねればとんでもないことになるのかもしれないぞ」ということに、どうやら執着心というかオブセッションのようなものがあるようだ。そういうことができない、不得意なひとがいることも十分分かっているのだが(例えばうちの奥さんはそれができない)、まぁこういうのは短距離走に向いてるのか長距離走に向いてるのか、みたいな話であって、ひとそれぞれみたいである。僕は本当に苦ではない。ちなみに走るのも長距離が好きだ。





そういいながらも写真はすべてiPhoneのみだし、なんとなくめんどくさくてハッシュタグもつけないし、あいかわらずの詰めの甘さというかユルさで、「どこまで本気でバズろうとしてんだお前は!」とどこかから突っ込みが来そうだけども、まぁこういうのはコソコソやっているうちが愉しいから、しょうがないですね。

それにしてもなにかのブログで、インスタ世代の若い子たちがフェイスブックはおじさんおばさんの社交の場でしょ、と語っているヤツがあって、なるほどなぁ言われてみるとそうかもと納得したわけだけど、そういう子たちの独特の読めないバズり具合というか響き具合が40代の自分にとって未知な感じでとてもおもしろい。例えばインスタのみでちょっと告知しただけだからと舐めていると若い子たちが異様に集まっている状況がそこにあったりする。なんというかそこに意味だったり理由があるからというよりも、「かわいい」のひとことというか、感覚と動きの間が無くてもっと瞬発力がある感じ。そりゃイベントなんかでもこれからは従来の集客方法では追い付いていかないだろうなぁという感じだ。まぁ自分もお店をしている方なので、ただただおもしろがってちゃいけないのだけれど、なにかそこには解読出来ない秘密の法則のようなものを感じてとっても興味深いなぁと思ってしまう。





2015年8月11日火曜日

『mocos』の広告について

現在発売中の雑誌『mocos』に併設の足つぼマッサージ店である『MU』の自社広告が出ています。



これで今年は計4回掲載させていただいたことに。

僕も以前編集の仕事をしていたので分かるのですが、普通こういう広告というのはどこかの編集社に取材や制作を頼んだりして創り上げていくことがほとんど。お店のコンセプトだとか訴えたいことを何度も話し合い、ラフを出してもらって創り上げていくわけです。

でもまぁ実際考えてみると、自分を含めた今のブレインであれば、ひとつの広告を創り上げることはできるわけだし、誰かに頼むよりもその方が面白いものができるであろう、というか、あんまりそういうことやっているひとたちも周りにいないし、だったらやる価値があるのではないか、ということでやってみたわけです。

どれもデザイン、イラストは上妻勇太君、文章は僕。最初に『MU』の方の経営者である奥さんと打ち合わせをしつつどんな感じにしようかと話し合い、文章とデザイン、イラストに落とし込んでいきました。



それで実際のところ、広告の反響はというと・・・うーん。支払ったその金額に対してどこまでペイできているかと言われるとなかなか難しい面がありますが、記事をご覧になって来られたお客様が何名もいらっしゃったのは確か。そして何より大切なのが、いらっしゃったお客様のほとんどがしっかりこの広告記事を読み込んだうえで、そしてあるひとはそのインパクトのあるデザインに惹かれて、ご来店されたということ。そこが僕らにとっては何より大きかった、かなと。

というのは、正直どの記事も案外と文章は長く、どちらかといえば広告としてよくあるような客寄せの耳辺りのいいものというよりかは、うちの店のコンセプトだとか、うちの足裏は正直痛いです、なんてことをクドいぐらいにわざとはっきりと打ち出したわけで。デザインだって媒体としては女性向けの雑誌なのに、そんなことをあまり(意識的に)捕われず、もう自社でやるんだからやるだけやっちゃおう、と。もう最初っからそこを理解してくれている方にこそ、来て欲しいと思っていたわけです。



これは雑貨の方にも言えることですが、やっぱり最初から本当の意味でこちらのやりたいことや伝えたいことを理解していただいたうえで来られるお客様というのは、もうその時点でスタートというか、関係性が全く違うのです。もしかするとその時点で、これらの広告を読んで少しでも腑に落ちた時点で、もうすでにお互いのお付き合いは始まっているのかもしれません(そして僕は雑貨のことでいえば展示会のたびに創るDM、お便りがその役目を担っているのでは、とぼんやりと考えています)。そこから実際お会いしてどう関係性を深め、そして他のお客様に繋がり普及していくか、そこはお店の力だし、スタッフひとりひとりの力といえましょう。もちろん今のこの時代に、そんなある意味硬い考えで果たしてお店がどこまで廻っていくのかどうか僕には知る由もありませんが・・・まぁショッピングモールや大手のお店と区別し、違ったことをやっていくためには、これも一理あるかと、そう信じてやっているわけです。って、相変わらず、あんまり自信はありませんけども。



最新号の『mocos』、ぜひチェックしてみてください。