2018年8月8日水曜日

無理している人は。

リリー・フランキーと料理家の澤口知之による名著『架空の料理空想の食卓』のなかで、「無理している人は、世の中を幸せにする」という名文がある。



へたに夢なんかみるより、とにかくいろんな無理をしろ。その無理こそが美しいし、「今日はいい無理みたなぁ」という素晴しい無理こそ、ひとの明日への鋭気となる。みたいなことを言っているのだが、いつも読み返したくなる名文だ。

いや、ほんとそうだよなぁ、と。考えてみれば自分を含め、周りにはなんだか無理しているひとばかり。得てして特に、自分がこころから想うモノを産み出したり、ひとのためにご飯を拵えたりすることを仕事にしているひとなんて、割に合うかどうかなんて考えているわけがない。そしてどう考えても、彼らががんばって働いたそのお金がその後手元へ見事に残っているようにも思えない。だって手元にお金が入っても、必ずや彼らは次の無理のために使ってしまうに決まっているから。もうそれはそういう性分なのだろう。




もちろんそんなひとばかりではないのも知っている。モノを産み出したり、ひとのためにご飯を拵えたりすることだって、きちんとしたビジネスなのだし、できるだけ無理せず、さくっとすべてをお金と時間の秤にかけてやってしまうひともいるにはいるだろう。でも少なくとも自分はハナっからそういうひととは相容れる自信がない。久々に出会ったその隙から「・・・最近どう? 儲かってる?」なんて聞いてくるのがその手のひとであるはずで、無理の感覚なんてそのひとと共有しようがないから。



でも僕のいうそんな無理なんて、じつはなかなか見れるものじゃない。なかなかできないからこそ無理なのであって、そして無理はいつまで続くかわからないし、いつ身体が壊れるか分からないし、いつお金が尽きるかもわからない。だからこそ「おいおい、これ無理してんなー!」と感じたら、たくさんその無理を味わいに行くのがその筋のマナーだと思う。美しい無理は他のなにものでも埋められるわけではないから。









そういう意味では。展示会の搬入直前にみなでヨナベをしながら創り上げた店内デコレーション、展示会中に作家自ら壁に直接描かれしその絵、紙質から異様にこだわった見開きのDM、展示会開始直前に起こってしまった創作的に衝撃的な事件にめげず再々に渡って追加納品される作品たち、マフィン&焼き菓子作家『hocolovu』さんとの手描きによるコラボBOX、いまだやったことのない初の造形&絵付けワークショップの2連チャン。・・・とどのつまりは「おいおい、これ無理してんなー!!」。

だからこそ、そんな無理を観に来てくださいまし。『Cellula-Shige Yuko Exhibition-』は今週日曜までです。






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