2017年9月12日火曜日

未だ見ぬひと




・・・ああ、暇で忙しい。忙しいけど暇だ。

目の前にやらなければならないことは文字通り山積みなのだが、それを片目で睨みながら、まだ見ぬ遠い誰かへまだ見ぬ遠いいつかの日のために便りを出したりする。まだお会いしたこともないひとに突然メールするというのはとても不思議な行為だ。文面からでなくとも、この店のホームーページやこんな文章やフェイスブックやインスタグラムを見て、なんらかが伝われば良いのだけど、それがそうとも限らない。ほんと、自分からしてもここはわかりにくいへんな店だもんな。

それはそうと、いま自分がそこに居る位置って、やっぱりなかなかどうして大事で、逃れられないことだ。ついそれを忘れそうになるけど、やっぱりそれは逃れられないに違いない。ことあるごとに言っているんだけど、この店はたまたま熊本でやっているが、これをそのまんま東京だとか沖縄だとかハワイだとか、まぁどこでもいいんだけどどっかに移したって、基本やることは変わらないはず、というか、そうあらねばならぬと常々思っている。ここでやれないのならばどこに行ってもやれないのだろうし、場所が変われどやる方の自分は変わらないんだから。その場に根を張る以上、その場のひとたちと深くなって行くのは当たり前にしょうがないけれど、それもまぁたぶんたまたまな面もあって、場所が変わればまた別のひとたちといまと変わらないように深くなっていくのだろう。

でも、といっても、現実に距離なんてものはたしかに大事で、昔、東京にいた頃にある日そのことに気づいて驚愕したことがある。例えば、東北なんてものがあるけど、実は地図を見てみると単純に東京からはそんなに離れていないんだね。行けないことはない距離というか。いや、もちろんそれは自分が九州の人間という土壌があるから、九州に比べたら、という目線があるのだろうけど。九州にいて東北を見るのと、東京にいて東北を見るのとではそりゃ大違いであって。たぶんゆくゆくは九州に帰ることを予想していた自分はある日そのことに気づいて、これはいまのうちに行っとかねば、と思い立ち、すぐに青春18きっぷを買って、鈍行で東京から上に向かったのを思い出す。日本海沿いにずぅぅとひたすら上に上がっていって、途中なぜか山形の酒田なんかによりながら、結局は青森まで行き着いて、新鮮で溢れるようなホヤを食べながら田酒なんかの美味しい日本酒を呑んで、その辺の銭湯にふらりと入ったらば知らないおじいさんに話かけられたけど、まるで言葉が通じなかったのがなんとも素晴しい経験だった。

・・・ええと、いったいなにを言いたいんだっけ。うん、距離だ、距離。そう言う意味でいえば、今自分は九州にいるのだから、九州中を廻っていろんなことやものを探せばいいのかもしれない。けれど、たぶん距離と同じくらいに縁みたいなものが人間はやはりあるようで、例えばなぜか自分は岡山とはたびたび縁があったりする。岡山、なんかのほほんとしてて(勝手に失礼なイメイジ)ほんと好きだ。宮崎もあるといえばある。宮崎も独特の時間の流れとひとが大好きだ。

ただまぁそろそろこの店も勝負どころに入ってきてることも痛感している。このままではたぶんこのままであって、もっともっといろんなひとや作品に会って、僕自身がもっともっと驚いたり感激したり唸ったり感心したりする必要があることをなにより痛感しているのだ。自分はどこまでいっても伝え手なので、なにより自分自身がまず驚いたり感心しないことにはなんにも物事は動かない。ということを自分がいちばんよく知っている。忙しいようで暇、暇なようで忙しいルーティーンに入り込んで、一年なんてあっという間に過ぎて行く。これも嫌という程知っている。ということで、今日も未だ見ぬ人へ便りを出す。未だ見ぬひとが少しでもうちの店に興味を持ってくれて、未だ見ぬ未来のひととうまく繋がるといいのだけれど。・・・ということで、僕は明日43歳なる。





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